小説

誕生日
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【花白誕生日2008】

「何してんの、玄冬?」

「・・・なんでもない・・・・。」



今日は、花白の誕生日だ。

花白が欲しいもの・・・・・・。

それがわかったら苦労しない。

いつも、こいつは俺の欲しいものばかり持ってくる。



「・・・・花白。」

「うん?」

「・・・何か欲しいものはないのか?」



花白は、考える様に「うーん・・・・」と声をあげている。

暫く待つが、先ほどと大差変わっていない。



「・・玄冬がいればそれでいいよ。僕は」



そう笑顔で答える。

それは、嬉しいことだと思う。

しかし今は喜んでる場合じゃない。

俺が喜ぶんじゃなくて、こいつを喜ばせるための日だ。

花白が、今までに喜んだもの。

雪と・・肉と・・・・・自由・・・・と俺の笑顔・・・・?

最後は関係ない。

雪と言っても、もう雪解けだ。

そうなると、俺が花白に与えられるものは肉しかないわけで。



「・・・黒鷹、いるんだろう?」

「バカトリ?」

「ちびっこのおもりをさせる気かい?」

「おもりじゃない、ただどこかに連れて行ってあげてくれないか。」

「なっ!嫌だよ!!俺、玄冬に会いにきた・・・って!!引っ張んな!!!」



暴れる花白を、黒鷹は笑いながら連れて行く。

せっかく遊びに来たのはわかるが、せめて料理だけは見られたくない。



「時間は3時間・・・それ以上はちびっこを預かってはいられないからねぇ・・・・。」

「わかってる。任せたぞ、黒鷹。」

「玄冬の頼みだ。私に任せるといい。」



そう言って、黒鷹は飛んでいく。

もちろん、花白は脇に抱えられてもなお暴れているようだった。

その姿が見えなくなるまで、後姿を見送り作業に取り掛かる。

肉は、花白や黒鷹の好物だ。

だから、無駄に野菜より肉の方が多いはずだ。

そして昔、黒鷹が俺の誕生日を祝ってくれたときは必ずケーキがあった。

白いクリームに包まれた小さなケーキ。

それが嬉しかったのを覚えている。

俺の笑顔が嬉しい事に入るのならば、俺が嬉しかったことは花白も嬉しいはずだ。

料理しか与えられないのは、少し悔いが残るが仕方ない。

俺の問題じゃない。

ただ、花白が喜んでくれるかどうかだ。



「・・・・野菜は少ない方がいいのか・・・・・?」



ふと考える。

きっと花白のことだ。

彩の国でも野菜を食べていないだろう。

野菜は、摂取しなければいけない必須項目だ。

でも、黒鷹同様野菜をどれだけ細かく切っても気づきそれを丁寧によけている。

花白の誕生日くらいとは思うものの、それは俺の心が許さない。



「・・あいつは、緑色なら食べれるんだろう・・・。」



今日は、ハンバーグにしよう。

そしたら、野菜は細かく切れる。












__玄冬格闘中__





「いいかげん下せよ!!!」

「まぁ、落ち付き給え。」



なんで、玄冬に会いに来たのによりによってこいつと一緒にいなきゃいけないんだ。

相変わらず、抱えられたままだし・・・・。

確かに、玄冬やこいつに比べたら僕は小さいけど。



「・・・って言うかここどこだよ。」

「ん?ここは玄冬が小さい頃遊んでいた場所。」

「・・・玄冬が・・・・?」

「食いつきいいね、本当に。」



こいつの話は無視して・・・・。

小さい頃ここで遊んでいたの?

静かで、誰も人がいないような草むら。

誰も管理していないのか、草が生い茂っている。

こんな寂しいところで、君は一人で遊んでいたの?



「・・・他に誰もいないの・・・・・?」

「ん?・・玄冬は、人を近寄らせなかったからね。」

「こんな寂しいところで?」

「私にだって仕事がある。玄冬を養っていかないといけないからね。

 私がいない間は、いつもここに来たいと聞かないんだ。」



「あの子も頑固だからねぇ」としみじみ呟いている。

僕は、確かに自由はなかったけどいつも周りには人がいた。

それが辛い時もあったけど、それでも一人よりは幸せだった気がする。

それに、いつも隣にはあの人がいた・・・・。



「・・・そっか。」

「うん?」

「早く、玄冬のとこに連れてってよ。」

「んー、私も早く解放されたいんだがね・・・・。」



早く会いたい・・・。

もう一人でいる必要なんてないんだよ。



「なんでもいいからつれてけって言ってんだろ!」

「・・・・私のせいじゃないからな、玄冬。」



黒鷹は小さくため息をついて、再度僕を脇に抱える。

気に食わないが、暴れては会うのに時間がかかる。

仕方ない、今だけ大人しくお前に従ってやる・・・・・。



「ん?暴れないのかい?」

「・・・今だけな。」

「ふーん?そんなに玄冬に会いたい?」

「・・・うっさい・・・・。」











__玄冬家__



「できた・・・・・」

『がしゃんっっ!!!』



目の前に並べた途端、窓ガラスから何か飛び込んでくる。



「いった・・・・・。バカトリ!もっと普通に着地できないの?」

「無理言わないでくれよ、いきなり暴れ出したのはちびっこだ。」

「うっ・・・・。」

「・・・・何してるんだ、お前たち・・・。」

「ただいま、玄冬。ちびっこがどうしても帰りたいって聞かないから帰ってきたんだけど、ちょうどよかったみたいだね。」



花白と黒鷹は、窓ガラスから家に入ってくる。

もうそれも日常茶飯事だから、諦めている。

何度言っても、守ったことがない。



「玄冬・・・・もうあんな寂しいところに行かなくていいからね!!」

「・・・・はぁ・・・?」

「もう、終わったんだから。君は一人じゃないんだから。」

「・・・花白。話しが読めないんだが・・・。」



花白は、ぐっと俺に抱きついて言う。

あんな寂しいところとは一体何処だろう。

黒鷹を見ると、苦笑気味に笑っている。

その顔を見て気づく。

小さい頃遊んでいた場所を。

俺は、小さく笑い花白の頭を撫でる。

また、こいつは俺の嬉しいことや気にしていることを平気でかき消していく。

一人で悩んできたことが馬鹿みたいに思えるくらい。



「・・・・花白。」

「・・うん・・・?」




「誕生日おめでとう。」




「・・・・ありがとう・・・・。」



花白は、小さく笑う。

そんな花白につられて、俺も小さく笑ってしまう。


一年に一回のおめでとうを君に・・・・。

一つ一つ上がっていく階段には、いつも君がいて。

それが、ずっと・・・ずっと続けばいい・・・・。

笑って昇っていける階段であれば、それ以外は何も望まない。










<おまけ>

「・・・・玄冬。」

「なんだ。」

「・・・・せっかく誕生日だからって、野菜を表に出さないのは君の心遣いだと思う。」

「・・・・・。」

「だからって・・・・わからないように、野菜を微塵切りにしても気づくよ・・・。」

「・・・人参は入っていない。」

「・・・・・玄冬らしいって言うか・・・・・。

 でも、玄冬の料理を誕生日に食べれるなんて、本当に嬉しい。ありがとう。」



そう言って、花白は今まで以上に笑っていた。









後書き
花白、誕生日おめでとう!!!
書きあげることできて、嬉しいw
実際、間にあわないと思ってたからね;
祝えてよかったw

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