アクセサリーは防具だ。
強くありたいと思うわたしを守る、ささやかな防具。











アクセサリーはたくさんある。ネックレス、ブレスレット、ピアス、指輪…。その中でもわたしは、指輪がいちばんの防具のような気がしている。片方にひとつ、もう片方にふたつみっつと着けると、着けた瞬間心が少し守られた心地になる。輪をはめた自分の両手を見て、ひとつ握ると、まるでメリケンサックでも着けたかのような錯覚に陥る。防具は転じて武器にもなる。


耳にピアス、首にネックレス。腕にブレスレットを着けて指輪をはめると、鎧でも着込んでいるようだと自らを嘲笑する。隙のないように洋服を着て、アクセサリーを片端から着けて、完全武装でもしているみたいだ。頭の中で、見たことのない遥か過去の武士と自分の幻を重ね合わせる。











あくまで幻、瞬けば消える残像のようなもの。


わたしはね、突然大きな病気に掛かってしまったの。…その言い方はおかしいかもしれない、大きな病気に掛かっていたことをいま知ったのだ。

病室のベッドに横たわるわたしをいろんな人がお見舞いに来る。幼い頃から親しくしていた友人、大学で知り合った友人、いく晩か夜を共にしたあの人たち。最近体重が重くなったことにショックを受けていたわたしは言うの「なにもしなくても痩せられてラッキーだね」って。たぶんわたしは笑ってる。自分の不運を嘆いたりはしないのだ。なるがままに生きてきたわたしに、これくらいの重しが丁度いいのだと。そのわたしを見て、その人たちは泣きそうな顔で笑うのだ。わたしは幾人かの人生において、その場限りであっても忘れられない人間になったのだと喜ぶのだ。

わたしの最期の限られた時間に、愛しい人に出会えたらいい。今まで健康ゆえに退屈し、いつ死んでもいいなどとほざいていたわたしが、泣きたいほど生きたいと思うことができたらいい。


















これは、フィクション。
ありきたりであるからこその劇的な人生を渇望するわたしの、くだらない妄想。





こういう、日常。
今年の春のこと。